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【企業研究】ヒューリック ~優良不動産賃貸会社~

 今日、業界地図オフ会に参加させて頂き大変勉強になった!


今回は不動産業界がテーマだったのだが、筆者は「ヒューリック」を選択。せっかくなので、自分の発表をここで共有したい。

1. ヒューリックとは? ~富士銀行の店舗管理から優良不動産賃貸会社へ~

 ヒューリックは、創業から60年以上の歴史を誇る老舗不動産会社で、旧安田財閥からなる芙蓉グループの一員である。
注目すべきは…

  • 旧富士銀行の店舗管理と保険代理店業からスタート
  • 2008年11月に東証1部上場
  • 2012年7月に昭栄と合併
  • 2013年4月にヒューリックリートマネジメント(株)設立

(1) もともとは旧富士銀行の店舗管理会社

 来歴からも分かるように、旧富士銀行の店舗管理と保険代理店からスタート:


ヒューリックの来歴

1957年03月 不動産業務(旧富士銀行の店舗管理)・保険代理店業等を主目的に日本橋興業(株)の商号で設立
   06月 損害保険代理店業務を開始
2006年03月 西浦三郎 代表取締役社長就任(現 代表取締役会長)
2007年01月 ヒューリック(株)に商号変更
2008年11月 東証一部上場
2010年07月 保険代理店事業を会社分割
千秋商事(株)及び芙蓉総合開発(株)と合併
2011年04月 ヒューリックホテルマネジメント(株)設立(現連結子会社
2012年07月 旧昭栄(株)と合併
   10月 ヒューリック本社ビル竣工、本社を移転
2013年04月 ヒューリックリートマネジメント(株)設立
2015年12月 (株)シンプレクス・インベストメント・アドバイザーズと合併
2016年11月 ヒューリックプライベートリートマネジメント(株)設立
2017年05月 HULIC &New SHIBUYA 竣工(同社初の自社開発商業施設)

(出典:歴史・沿革|会社情報|ヒューリック株式会社から筆者が整理・作成)

(2) 平成バブル期には「飛ばし先」に

 こうした経緯から富士銀行との関係は深く、一時は「飛ばし先」とまで言われたという*1

バブル崩壊後の一九九六年から九九年にかけ、苦境に陥った旧富士の要請を受ける形で銀行から九十五物件を相次いで購入。これを賃貸することで業績を膨らませてきた。一時は旧富士が抱え込んだ不良債権の"飛ばし先"として利用されたともいわれている。

(3) 2008年に東証1部上場

 2008年になると東証1部にまで上場する。

(4) 転機の1つは昭栄との合併

 2012年7月には同じ芙蓉グループの不動産会社である昭栄を逆さ合併し、それ以後、売上高が大きくなっていく*2

www.nikkei.com

(5) 2013年4月にヒューリックリートマネジメント(株)設立

 2013年4月になるとヒューリックリートマネジメント(株)を設立した。今ではヒューリックリート投資法人の資産運用会社として、資産運用に携わっているのだ。

2. ヒューリックは儲かっている ~優良物件と低い販管費が理由~

(1) ヒューリックの事業 ~ほぼすべて不動産~

 スタートは不動産管理と保険代理店の2足の草鞋だったが、事実上、純粋な不動産会社に近い。

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(出典:ヒューリック有価証券報告書を基に筆者作成)

(2) 好業績 ~高い利益率~

 大手不動産会社と比較してもヒューリックは利益率が高いのが分かる。

 以下のグラフは「業界地図」を基に不動産大手の連結損益計算書ウォーターフォール図でまとめたものを比較したもので、左の緑が売上高(営業収益)で、そこから売上(営業)原価、販管費営業外損益特別損益、税金を差し引いて、最後の当期純利益(青)を示している*3

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(出典:各社有価証券報告書を基に筆者作成)

つまり、売上高営業利益率が大手不動産会社の中でも一番高いのだ:

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(出典:各社有価証券報告書を基に筆者作成)

 ROAおよびROEで見ても利益率が高い

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(出典:各社有価証券報告書を基に筆者作成)

(3) なぜ利益率が高い?① ~優良物件を保有

 なぜ利益率が高いのだろう?1つ目の理由は、押し付けられた「富士銀行物件」が都内の優良物件だからではないだろうか。


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(出典:ヒューリックWebサイト*4

(3) なぜ利益率が高い?② ~低い販管費が1つ~

 2つ目の理由は、売上高(営業収益)に占める販売促進及び一般管理費が少ないことにあるのかもしれない。

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(出典:各社有価証券報告書を基に筆者作成)

2. ヒューリックとJ-REIT

 2013年以降はヒューリックリート投資法人を設立し、スポンサーとして関わっているのだ。同投資法人も順調に利益を上げている: 

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(出典:ヒューリックリート投資法人有価証券報告書を基に筆者作成)

3. ヒューリックの次 ~多角化と高級化~

 ヒューリックは今年度(2020年度)から新たな中長期経営計画に則り、ビジネスを行っている。そこでの戦略の一部が、多角化と高級化である。
 たとえば、高級旅館である「ふふ」ブランドを経営している。

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(出典:ふふ奈良公式Webサイト)

4. ヒューリックの財務的課題 ~多額の有利子負債~

(1) 課題は多額の有利子負債

 では、どのような課題があるのだろうか?それは(純)有利子負債の割合が多いことである:


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(出典:ヒューリック有価証券報告書を基に筆者作成)

上のグラフは、左が各社のDEレシオの推移、右が各社のEBITDA対比の純有利子負債倍率*5の推移である。同業他社の中で、DEレシオもEBITDA純有利子負債倍率も大きいのだ。
 ただし、だからといって重債務に対して脆弱とは必ずしも言えない。なぜならば、ICR(インタレスト・カバレッジ・レシオ)は同業他社の中でも大きい方だからである。

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(出典:各社有価証券報告書を基に筆者)

 つまり、高レバレッジを掛けての高利益経営を行っていると評価できるだろう。

5. まとめ

 ヒューリックは、

  • 旧富士銀行店舗という都内の優良不動産を高利益率の不動産賃貸経営
  • J-REIT経営や高級旅館経営など不動産事業内で多角化を推進
  • 純有利子債務残高が大きい(ただしICRは業界内で高水準=良い)

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*1:みずほが悩む「ヒューリック」の狼藉 | 【公式】三万人のための総合情報誌『選択』- 選択出版参照

*2:合併時、存続会社は昭栄だったが、商号はヒューリックとなったので事実上は吸収合併といえると筆者は考える

*3:売上高で割って割合表示にしている

*4:https://www.hulic.co.jp/business/参照

*5:EBITDAは直近3期の平均値を用いている。

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